場の量子論(2-3)

前回、愚直に量子力学と特殊相対性理論を混ぜ合わせようとしたときに因果律が崩壊することを見ました。今回は場を導入していきます。

ラグランジアン

量子力学は解析力学から出発していました。ここでも作用を考えることからしていきます。

\begin{eqnarray}
S=\int Ldt=\int d^4x\mathcal{L}(\phi,\partial_{\mu}\phi)\tag{1}
\end{eqnarray}

ここで\(S\)は作用、\(L\)はラグランジアンです。解析力学より、ラグランジアンの時間積分が作用としています。ここで\(\mathcal{L}\)はラグランジアン密度と呼ばれる量で、空間積分をすることでラグランジアンになります。(つまり\(\int d^3x\mathcal{L}=L\))
ラグランジアン密度の引数は場\(\phi\)とその微分\(\partial_{\mu}\phi\)です。ラグランジアンは位置とその微分(運動量)を引数としていたことの類推で考えています。ここで場というものは、時空間上の任意の点に対して値が与えられている関数です。つまり、ラグランジアン密度\(\mathcal{L}\)は関数を引数として持つような汎関数です。
これからは、ラグランジアン密度のことを単にラグランジアンと呼ぶことにします。

最小作用の原理

解析力学では、作用が最小となるような(正確には変分が0となるような)ものが実現していました。ここでも同様で、作用(1)の変分をとります。
まず、ラグランジアンの変分を求めます。テーラー展開より、

\begin{eqnarray}
\delta\mathcal{L}&=&
\mathcal{L}(\phi+\delta\phi,\partial_{\mu}\phi+\delta(\partial_{\mu}\phi))-\mathcal{L}(\phi,\partial_{\mu}\phi)\\
&\sim&\mathcal{L}(\phi,\partial_{\mu}\phi)+\frac{\partial\mathcal{L}}{\partial\phi}\delta\phi+\frac{\partial\mathcal{L}}{\partial(\partial_{\mu}\phi)}\delta(\partial_{\mu}\phi)-\mathcal{L}(\phi,\partial_{\mu}\phi)\\
&=&\frac{\partial\mathcal{L}}{\partial\phi}(\phi,\partial_{\mu}\phi)\cdot\delta\phi+\frac{\partial\mathcal{L}}{\partial(\partial_{\mu}\phi)}(\phi,\partial_{\mu}\phi)\cdot\delta(\partial_{\mu}\phi)
\end{eqnarray}

これをもとに作用の変分を求めると

\begin{eqnarray}
\delta S&=&\int d^4x\ \delta\mathcal{L}\\
&=&\int d^4x\left\{\frac{\partial\mathcal{L}}{\partial\phi}\delta\phi+\frac{\partial\mathcal{L}}{\partial(\partial_{\mu}\phi)}\delta(\partial_{\mu}\phi)\right\}\\
&=&\int d^4x\left\{\frac{\partial\mathcal{L}}{\partial\phi}\delta\phi+\frac{\partial\mathcal{L}}{\partial(\partial_{\mu}\phi)}\partial_{\mu}(\delta\phi)\right\}\\
&=&\int d^4x\left\{\frac{\partial\mathcal{L}}{\partial\phi}\delta\phi-\partial_{\mu}\left(\frac{\partial\mathcal{L}}{\partial(\partial_{\mu}\phi)}\right)\delta\phi+\partial_{\mu}\left(\frac{\partial\mathcal{L}}{\partial(\partial_{\mu}\phi)}\delta\phi\right)\right\}\quad\mbox{部分積分をした}\\&=&0\tag{2}
\end{eqnarray}

(2)式の下から2行目の第3項目は発散定理より、4次元の積分領域の表面積分になるので表面項とも呼ばれます。境界条件として\(x\rightarrow\infty\)では\(\delta\phi\rightarrow0\)を要請すると、表面項は0となります。
更に、場の変分\(\delta\phi\)は境界条件さえ満たせば任意にとれるので、被積分関数を\(\delta\phi\)で括ってそれ以外の因子が0にならないと\(\delta S=0\)が満たされません。つまり、

\begin{eqnarray}
\partial_{\mu}\left(\frac{\partial\mathcal{L}}{\partial(\partial_{\mu}\phi)}\right)-\frac{\partial\mathcal{L}}{\partial\phi}=0\tag{3}
\end{eqnarray}

(3)式はオイラー・ラグランジュ方程式と呼ばれます。この方程式は解析力学においては、運動方程式として扱っていました。場の量子論でも同様に運動方程式として扱います。
最小作用の原理より、オイラー・ラグランジュ方程式が求まりました。

ハミルトニアン形式

場の理論ではラグランジアン形式とハミルトニアン形式の2つで議論することができます。実はラグランジアン形式はローレンツ不変性を議論することが簡単で、特殊相対性理論と融合する際に重宝します。しかし、今回はハミルトニアン形式で話を進めます。ハミルトニアン形式の方が量子力学との対応を楽に議論することができるからです。

解析力学では、位置\(q\)から共変運動量\(p:=\frac{\partial L}{\partial \dot{q}}\)を作り、さらにハミルトニアン\(H\)を定義できました。
\(H:=\sum p\dot{q}-L\)

これと同じことをしたいので、まず正準運動量に対応する量を定義します。

\begin{eqnarray}
p(\vec{x})&:=&\frac{\partial L}{\partial\dot{\phi}(\vec{x})}\\
&=&\frac{\partial}{\partial\dot{\phi}(\vec{x})}\int d^3y\ \mathcal{L}(\phi(y),\dot{\phi}(\vec{y}))\quad\mbox{(1)より}\\
&\sim&\frac{\partial}{\partial\dot{\phi}(\vec{x})}\sum_{\vec{y}}\mathcal{L}(\phi(\vec{y}),\dot{\phi}(\vec{y}))d^3y\quad\mbox{離散化した}\\
&=&\pi(\vec{x})d^3x
\end{eqnarray}

ここで\(\pi(\vec{x}):=\frac{\partial\mathcal{L}}{\partial\dot{\phi}(\vec{x})}\)は\(\phi(\vec{x})\)の正準な運動量密度と呼ばれます。これを使ってハミルトニアンを書くと、

\begin{eqnarray}
H&=&\sum_{\vec{x}}p(\vec{x})\dot{\phi}(\vec{x})-L\\
&=&\int d^3x\ \left[\pi(\vec{x})\dot{\phi}(\vec{x})-\mathcal{L}\right]\\
&:=&\int d^3x\ \mathcal{H}\tag{4}
\end{eqnarray}

ここで\(\mathcal{H}\)はハミルトニアン密度と呼ばれます。

クライン-ゴルドン方程式

実際に具体的な状況に落とし込んで計算します。
場が1種類:\(\phi\)のみ、相互作用もしない場合を考えます。ラグランジアンは次で与えられます:

\begin{eqnarray}
\mathcal{L}&=&\frac{1}{2}\dot{\phi}^2-\frac{1}{2}(\vec{\nabla}\phi)^2-\frac{1}{2}m^2\phi^2\\
&=&\frac{1}{2}(\partial_{\mu}\phi)^2-\frac{1}{2}m^2\phi^2\tag{5}
\end{eqnarray}

オイラー・ラグランジュ方程式(3)に代入します。

\begin{eqnarray}
0&=&\partial_{\mu}\left(\frac{\partial\mathcal{L}}{\partial(\partial_{\mu}\phi)}\right)-\frac{\partial\mathcal{L}}{\partial\phi}\\
&=&\partial_{\mu}(\partial^{\mu}\phi)-(-m^2\phi)\\
&=&\left(\partial_{\mu}\partial^{\mu}+m^2\right)\phi\\
&=&\left(\frac{\partial^2}{\partial t^2}-\vec{\nabla}+m^2\right)\phi\tag{6}
\end{eqnarray}

これを古典的な”Klein-Gordon方程式”と呼びます。
更に正準運動量密度と場の関係\(\pi(x)=\dot{\phi}(x)\)を使うとハミルトニアン(4)式がラグランジアンから求まります。

\begin{eqnarray}
H&=&\int d^3x\mathcal{H}\\
&=&\int d^3x\left[\frac{1}{2}\pi^2+\frac{1}{2}\left(\vec{\nabla}\phi\right)^2+\frac{1}{2}m^2\phi^2\right]\tag{7}
\end{eqnarray}

このハミルトニアンに関しては物理的な解釈ができます。
・第1項目は運動するのに必要なエネルギー(例えば、光は電磁場が移動していると解釈できます)
・第2項目は空間上に場が勾配を持つのに必要なエネルギー(エネルギーが局在するためにはその分エネルギーが必要)
・第3項目は場が周りに影響を及ぼすのに必要なエネルギー
と考えることができます。

まとめ

今回は解析力学の内容を「場」という概念へ拡張(するための準備)をしていきました。今考えているのはまだ古典的なものです。
次回はネーターの定理について触れます。解析力学ではネーターの定理が導かれましたが、場を導入してもネーターの定理は成立することを見てきます。


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