前回、ラグランジアン形-式とハミルトニアン形式を紹介して場を引数にするような解析力学を導入しました。また、オイラー・ラグランジュ方程式とKlein-Gordon方程式も紹介しました。
今回も解析力学を「場」の観点で解析していきます。
解析力学での重要な定理の一つにネーターの定理がありました。これは、
法則が対称性を持てばそれに付随する保存則が存在する
という定理です。今回は場の観点からこのネーターの定理を導入していきます。
変分と対称性
場を微小に変換し、変分をとることを考えます。
微小変換は、パラメータ\(\alpha\)を微小として次のように書けます。
\begin{eqnarray}
\phi(x)\rightarrow\phi'(x)=\phi(x)+\alpha\Delta\phi(x)\tag{1}
\end{eqnarray}
変分は勿論\(\phi'(x)-\phi(x)=\alpha\Delta\phi(x)\)です。
この変換を行ったとき、運動方程式が不変なら「対称」といいます。つまり、ラグランジアン\(\mathcal{L}\)が変換(1)を行った際に不変ならOKです。
また、ラグランジアン\(\mathcal{L}\)から作用は(2)のように書けました。
\begin{eqnarray}
S=\int d^4x\mathcal{L},\quad (\mathcal{L}はラグランジアン)\tag{2}
\end{eqnarray}
ここで積分には境界条件として「積分領域の境界の表面積分は0」であったことに注意すると、ラグランジアンに表面積分の項、つまり(ガウスの発散定理より)発散項を足しても作用は不変ということが分かります。式にすると
\begin{eqnarray}
\mathcal{L}\rightarrow\mathcal{L}+\alpha\partial_{\mu}\mathcal{J}^{\mu},\quad (\mbox{ここで}\mathcal{J^{\mu}}\mbox{は任意関数})\tag{3}
\end{eqnarray}
と変形させるような自由度を持っていることになります。変換(1)を(2)に代入して、\(\mathcal{L}\)が不変になることを要請します。まず、(1)の変換の下でラグランジアン\(\mathcal{L}\)がどう変化するか確認します。
\begin{eqnarray}
\alpha\Delta\mathcal{L}&=&\mathcal{L}’-\mathcal{L}=\mathcal{L}(\phi’,\partial_{\mu}\phi’)-\mathcal{L}(\phi,\partial_{\mu}\phi)\\
&=&\mathcal{L}(\phi+\alpha\Delta\phi,\partial_{\mu}(\phi+\alpha\Delta\phi))-\mathcal{L}(\phi,\partial_{\mu}\phi)\\
&=&\frac{\partial\mathcal{L}}{\partial\phi}(\alpha\Delta\phi)+\left(\frac{\partial\mathcal{L}}{\partial(\partial_{\mu}\phi)}\right)\partial_{\mu}(\alpha\Delta\phi)\quad \tag{テーラー展開1次}\\
&=&\alpha\frac{\partial\mathcal{L}}{\partial\phi}\Delta\phi+\alpha\partial_{\mu}\left(\frac{\partial\mathcal{L}}{\partial(\partial_{\mu}\phi)}\Delta\phi\right)-\alpha\partial_{\mu}\left(\frac{\partial\mathcal{L}}{\partial(\partial_{\mu}\phi)}\right)\Delta\phi\tag{積の微分}\\
&=&\alpha\partial_{\mu}\left(\frac{\partial\mathcal{L}}{\partial(\partial_{\mu}\phi)}\Delta\phi\right)\tag{4}
\end{eqnarray}
ここで最後の等式はオイラー・ラグランジュ方程式を使いました。
\begin{eqnarray}
\partial_{\mu}\left(\frac{\partial\mathcal{L}}{\partial(\partial_{\mu}\phi)}\right)-\frac{\partial\mathcal{L}}{\partial\phi}=0\tag{オイラー・ラグランジュ方程式}
\end{eqnarray}
保存するカレント・チャージ
(3)と(4)を見比べて、この2つが同じであるはずなので、新たにカレントという量\(j^{\mu}(x)\)を導入して次のような式が書けます。
\begin{eqnarray}
\partial_{\mu}j^{\mu}(x)=0,\qquad j^{\mu}(x)=\frac{\partial\mathcal{L}}{\partial(\partial_{\mu}\phi)}\Delta\phi-\mathcal{J}^{\mu}\tag{5}
\end{eqnarray}
つまり、このカレント\(j^{\mu}\)が存在して、(微分が0なので)保存することが分かりました。
今は場が\(\phi\)1つしかない状況を考えましたが、一般に\(n\)個の場\(\phi_1,\phi_2,\cdots\phi_n\)に対しても同様の議論をすると
\begin{eqnarray}
\partial_{\mu}j^{\mu}(x)=0,\qquad j^{\mu}(x)=\left[\sum_{i=1}^{n}\frac{\partial\mathcal{L}}{\partial(\partial_{\mu}\phi_i)}\Delta\phi_i\right]-\mathcal{J}^{\mu}\tag{6}
\end{eqnarray}
となります。
(5)式を空間積分すると
\begin{eqnarray}
\int d^3x\ \partial_{\mu}j^{\mu}=\int d^3x\ \partial_0j^0-\int d^3x\ \vec{\nabla}\cdot\vec{j}
\end{eqnarray}
第2項目は発散定理より、表面項の2次元積分となりますが、境界条件より0になります。つまり、
\begin{eqnarray}
\frac{\partial Q}{\partial t}=\partial_0 Q,\quad Q:=\int d^3x\ j^0\tag{7}
\end{eqnarray}
ここで\(Q\)はチャージと呼び、(時間的な意味で)保存することが分かりました。
ネーターの定理
ここまでの議論をまとめます。
理論が対称的、つまり変換(1)の下で不変なことを仮定しました。
するとカレント\(j^{\mu}\)が存在して、それは微分すると0、つまり保存することが示せました。
更にカレント\(j^{\mu}\)を積分すると時間に対して保存するチャージ\(Q\)を導けました。
これは解析力学でのネーターの定理と同じです。つまり、場の解析力学でもネーターの定理が成立することがわかります。
まとめ
今回はネーターの定理を場の観点から示しました。
これは対称性があるとき、保存則があるという定理で、様々な保存則(運動量保存、エネルギー保存、電荷保存等)を証明できる定理です。
次回はこのネーターの定理を使って実際に保存量を計算してみることにします。
次回を読めば今回導入したカレントやチャージの意味が理解しやすいかと思います。
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