前回、ネーターの定理を紹介しました。
ネーターの定理は、物理法則が対称性を持つ場合、微分したら0になる、つまり保存するカレントとチャージが存在することを主張していました。
今回は実際にカレントとチャージを計算します。このカレントやチャージがどんなものか理解できる助けになれば幸いです。
具体例
では実際に具体例を計算していきます。まず確認としてカレント\(j^{\mu}\)とチャージ\(Q\)の式を書きます。
\begin{eqnarray}
\partial_{\mu}j^{\mu}(x)&=&0,\quad j^{\mu}(x)=\frac{\partial\mathcal{L}}{\partial(\partial_{\mu}\phi)}\Delta\phi-\mathcal{J}^{\mu}\tag{1}\\
\partial_0Q&=&0,\quad Q=\int_{\mbox{全領域}} j^0\ d^3x\tag{2}
\end{eqnarray}
ここで\(\mathcal{J}\)はラグランジアンに足される表面項です。
ラグランジアンが運動項のみの場合
では実際にラグランジアンをいくつか紹介して、それに関するカレントとチャージを求めていきます。
まずは、ラグランジアンが運動項のみの場合を考えます。これは
\(\mathcal{L}=\frac{1}{2}(\partial_{\mu}\phi)^2\)
と書けますが、質量0の粒子がポテンシャルのない時空を自由運動する(つまり等速直線運動)場合の、場への拡張と考えることができます。
カレントを求めていきます。
まず、場\(\phi\)の変分\(\phi\rightarrow\phi’=\phi+\alpha\)(\(\alpha\):定数)を行っても微分されて消えるので\(\mathcal{L}\)は不変、つまり\{\mathcal{J}=0\}がわかります。また、\(\Delta\phi=(\phi’-\phi)/\alpha=1\)です。これより、
\begin{eqnarray}
j^{\mu}=\frac{1}{2}\frac{\partial}{\partial(\partial_{\mu}\phi)}(\partial_{\mu}\phi)^2=\partial^{\mu}\phi
\end{eqnarray}
となります。このカレントは運動量とみなすことができ、カレントの保存は運動量が保存することを意味します。これに対応するチャージは
\begin{eqnarray}
Q=\int j^0\ d^3x=\int \partial^0\phi\ d^3x=\mbox{全領域の運動量}
\end{eqnarray}
となります。
複素スカラー場の場合
複素スカラーのラグランジアンを導入します:
\begin{eqnarray}
\mathcal{L}=|\partial_{\mu}\phi|^2-m|\phi|^2\tag{3}
\end{eqnarray}
ちなみにこのラグランジアン密度\(\mathcal{L}\)をオイラー・ラグランジュ方程式に代入すると
\begin{eqnarray}
0&=&\partial_{\mu}\left(\frac{\partial\mathcal{L}}{\partial(\partial_{\mu}\phi)}\right)-\frac{\partial\mathcal{L}}{\partial\phi}\\
&=&\partial_{\mu}(\partial^{\mu}\phi^*)-(-m^2\phi^*)\\
&=&(\partial^2+m^2)\phi^*\tag{4}
\end{eqnarray}
更に、\(\phi^*\)に対するオイラー・ラグランジュ方程式に代入すると
\begin{eqnarray}
0&=&\partial_{\mu}\left(\frac{\partial\mathcal{L}}{\partial(\partial_{\mu}\phi^*)}\right)-\frac{\partial\mathcal{L}}{\partial\phi}\\
&=&(\partial^2+m^2)\phi\tag{5}
\end{eqnarray}
(4),(5)式はKlein-Gordon方程式です。つまり、ラグランジアン(3)はKlein-Gordon場のラグランジアン(の例)となっています。
今度は場の変分として位相変化\(\phi\rightarrow\phi’=e^{i\alpha}\phi\)を考えます。
この位相変化をしてもラグランジアン密度\(\mathcal{L}\)は変化しません。よって\(\mathcal{J}^{\mu}=0\)となります。
場の変分は、\(e^{i\alpha}\sim1+i\alpha\)を使うと
\(\Delta\phi=(e^{i\alpha}\phi-\phi)/\alpha=i\phi\)、
同様に\(\Delta\phi^*=-i\phi^*\)
となります。
従ってカレントは(1)式に代入して
\begin{eqnarray}
j^{\mu}&=&\frac{\partial\mathcal{L}}{\partial(\partial_{\mu}\phi)}\Delta\phi+\frac{\partial\mathcal{L}}{\partial(\partial_{\mu}\phi^*)}\Delta\phi^*\\
&=&i[(\partial^{\mu}\phi^*)\phi-\phi^*(\partial^{\mu}\phi)]\tag{6}
\end{eqnarray}
となります。これは実際に微分すると0、つまり保存することが確認できます。
\begin{eqnarray}
\partial_{\mu}j^{\mu}&=&i\partial_{\mu}[(\partial^{\mu}\phi^*)\phi-\phi^*(\partial^{\mu}\phi)]\\
&=&i[(\partial^2\phi^*)\phi+|\partial_{\mu}\phi|^2-|\partial_{\mu}\phi|^2-\phi^*(\partial^2\phi)]\\
&=&-m^2|\phi|^2+m|\phi|^2\\
&=&0
\end{eqnarray}
カレント(6)は確率の式として解釈することができます。
まとめ
今回はネーターの定理により従う保存則や保存量をいくつか計算しました。
次回はKlein-Gordon場の正準量子化を通して、場の理論を展開していくことにします。
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