多項式 問題とその解答

こんにちは!マシューの数理理論部屋です。
今回は高校数学の範囲のうち、多項式に関する難易度高めの問題とその解答を紹介したいと思います。よろしくお願いします。

問題

\(f(x)=x^n+a_{n-1}x^{n-1}+・・・+a_{1}x+a_0\)とする。この時、\(f(a)=f(b)=f(c)=2 \)(a,b,cはお互いに違う整数)かつ\( a_k(1≦k≦n)\)は整数である。
このとき、\(f(m)=1\)を満たすような整数\(m\)は存在しないことを示せ。

解説

全体的な証明は背理法を使います。つまり、\(f(m)=1\)が問題の条件のもと成立するようなmが存在するとき、矛盾を導き出せることを示してそのようなmが存在しないことを示します。

\(f(a)=f(b)=f(c)=2\)であるので、ある多項式\(Q(x)\)が存在して、(1)を満たします。

\(f(x)=(x-a)(x-b)(x-c)Q(x)+2\)・・・(1)

\(Q(x)\)が整数多項式であること

(1)にて、\(Q(x)\)は整数多項式であることを示します。

まず\(Q(x)\)も\(f(x)\)と同様に
\(Q(x)=x^{n-3}+q_{n-4}x^{n-4}+・・・+q_1x+q_0\)とします。

\(-abcq_0+2=a_0\)であるので、\(q_0\)は整数です。・・・(A)

\(0≦z≦s\)(z,sは整数)を満たす全ての\(z\)に対し、\(q_z\)が整数であるとき、\(q_{s+1}\)も整数である・・・(B)についても示します。

(1)を展開して\(q_{s+1}\)が入る項を求めると

\(q_{s+1}x^{s+4}-(a+b+c)q_{s+1}x^{s+3}+(ab+bc+ca)q_{s+1}x^{s+2}-abcq_{s+1}x^{s+1}\)・・・(2)

(2)の最後の\(x\)の\(s+1\)乗の項の係数は\(a,b,c,q_0,q_1,・・・q_s,q_{s+1}\)の和と積で表されていて、これは(1)において\(a_{s+1}\)と一致するので整数でないといけません。もし\(q_{s+1}\)が非整数ならこの条件は成立しないので\(q_{s+1}\)も整数となります。

(A)と(B)より、数学的帰納法の条件が満たされたので\(Q(x)\)は係数が整数の多項式であることが示されました。

\(f(m)=1\)ということ

次に、\(f(m)=1\)とはどんな条件であるかを説明します。

a,b,cが互いに違う数なので(m-a)(m-b)(m-c)は0(mがa,b,cのうちどれかのとき)もしくは絶対値が6以上(mがa,b,cのうちどれでもないとき)のどちらかです。

\(f(m)=1\)は(1)に代入すると\(Q(x)\)≠0かつ(m-a)(m-b)(m-c)≠0が分かり、それより(1)を変形して

\(Q(m)=-\frac{1}{(m-a)(m-b)(m-c)}\)・・・(3)

右辺は整数ですが、左辺は明らかに整数ではないため(3)矛盾です。
背理法より、問題の条件を満たす整数mが存在しないことが示されました。

まとめ・コメント

今回は高校数学の問題と解答を書きました。
集合論での話も読んでくれている読者や集合論について知識がある人等は背理法を使った証明の例ともなったと思います。
“存在すること”を証明するのであれば例を1つ示せば良いのですが、”存在しないこと”を証明するためには背理法がかなり強い方法の一つだと実感できたのなら今回の目的を果たせたかと思います。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。質問や挙げてほしいトピック、更には今回の問題の別解等もありましたらコメント欄まで書いて頂けると幸いです。


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