直積について解説していきます。
定義
\(A,B\)をそれぞれ集合とする。
\(A\times B:=\) {\((a,b):a\in A,b\in B\)}を\(A\)と\(B\)の直積集合という。
ここで\((a,b)\)は順序対と言って\((a,b):=\){{\(a\)},{\(a,b\)}}とします。
\([(a,b)=(x,y)]\Leftrightarrow [(a=x)\land (b=y)]\)
これの証明は省略します(もし必要でしたらコメント欄までお願いします)。
この命題の意味は、1つ目の\(a\)と2つ目の\(b\)が両方等しくないと同じとは言えないという意味です。
例
例えば、平面座標系で書かれる\((x,y)\)という記号はまさしく直積の例となっています。
\((1,-1)\)の点と\((-1,1)\)の点は同じではないこと等、確かに命題が正しいことが分かります。
3つ以上の直積
さて、2つの集合でできた直積集合に対して、さらにもう1つの集合をかけて新たな直積集合を作ることを考えます。
\((A\times B)\times C:=\){\(((a,b),c):(a,b)\in A\times B,c\in C\)}
直積集合も集合なのでこれも直積集合となることが分かります。
ここで\(B\times C\)から作った直積を考えます:
\(A\times (B\times C):=\){\((a,(b,c)):a\in A, (b,c)\in B\times C\)}
定義から考えると\((A\times B)\times C\)≠\(A\times (B\times C)\)ですが、この2つを同じと考えます。つまり、2つの直積集合の元\(((a,b),c)\)と\((a,(b,c))\)が同じとみなします。
\(((a,b),c)\leftrightarrow (a,(b,c))\)・・・(1)
(1)は同値関係として考えています。完全に同じではないのですが、同じと考えることで次のように便利なことができます。
\((A\times B)\times C =A\times (B\times C)=:A\times B\times C\)
これは直積について結合法則が成立するという意味になっています。
このように直積を定義して更に4つ目、5つ目と更に大きな直積集合を作ることができます。また直積の\(\times \)の記号に寄せて、同じ集合で直積集合を作るときには右肩(指数として)にかけた回数を書くこともあります:
\(\underset{i=1}{\overset{n}{\prod}}A=A^n\)
射影
射影は直積集合から集合への写像として定義されています。
\(\Pi_i:A_1\times A_2\times ・・・\times A_n\rightarrow A_i,(a_1,a_2,・・・,a_n)\mapsto a_i\)
を第\(i\)成分への射影といいます。
例
3次元直交座標上の楕円体(中身が詰まったもの)\(V\)を射影してみます。
\(V:=\){\((x,y,z)\in\)R:\(\frac{x^2}{a^2}+\frac{y^2}{b^2}+\frac{z^2}{c^2}≦1\)}
ここで\(a,b,c\)は任意の実数です。
この図形\(V\)を\(x\)に射影すると
\(\Pi_x(V)=\){\(x\in\)R:-a≦x≦a\)}
となります。この射影は\(x-y\)平面への射影も考えることができます。
\(\Pi_{xy}(V)=\){\((x,y)\in\)R\(^2:\frac{x^2}{a^2}+\frac{y^2}{b^2}≦1\)}
これは平面上の(中身が詰まった)楕円になっていますね。
\(z=\)∞から平行な光線で照らした時、\(x-y\)平面上に映る影が\(\Pi_{xy}(V)\)となっています。
まとめ
今回は直積について紹介しました。
簡単に考えて、平面上で\((x,y)\)や空間上で\((x,y,z)\)としたものと考えることができます。
射影については、影のようなものとして捉えると理解が深まるとおもいます。
今回もありがとうございました。
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