集合論(14) 順序①

集合論

同値関係は”=”の条件を緩めた二項関係として捉えることができました。
今度は”≦”,もしくは”<”の条件を緩めた二項関係として「順序」を紹介します。

定義(等号付き順序)

\(A≠\varnothing \)上の二項関係\(I\)が等号付き順序であるとは、次の2条件を満たすときにいう:\(・aIa(^{\forall}a\in A)\\・aIb,bIc\Rightarrow aIc(^{\forall}a,b,c\in A)\\このとき、(A,I)の対を順序集合という。\)

この定義の意味を考えてみます。

等号付き不等号”≦”は等号付き順序の一例と言えます。
\(^{\forall}a,b,c\in\)Rに対して、\((1)a≦a,(2)[a≦b,b≦c]\Rightarrow [a≦c]\)を満たすことはすぐわかります。

もう一つ例を挙げます。
教室内の列を右から順番に1,2,・・・6と番号を付けたとします。

ここで教室内のある席\(a,b\)に対して
[(\(a\)の列番号)≦(\(b\)の列番号)]\(\Leftrightarrow\)[\(aIb\)]
として定義します。

このとき、二項関係\(I\)が等号付き順序であることはわかるかと思います。
しかし、\(aIb\)かつ\(cIb\)のとき、\(a=c\)とは言えないことが分かります。
等号付き不等号”≦”でも\(1≦2\)かつ\(0≦2\)だからと言って\(1=0\)ではないことと同じです。

ここから更に\(aIb\)かつ\(bIa\)のときでも\(a=b\)とは言えません。
不等号”≦”では\(a≦b\)かつ\(b≦a\)なら\(a=b\)ですが、一般的に順序にてはこのようなことが起こることに注意が必要です。

順序は不等号を少し広げたものとして捉えることができます。
上の例を使うと、1列目の席と3列目の席は直接どちらが大きいかを不等号で比べることはできませんが、どっちが前かを順序にて比べることができるようになります。

ここから更に定義をしていきます。

定義(全順序、半順序)

順序集合(A,I)が\(^{\forall}a,b\in A\Rightarrow (aIb)\lor (bIa)\)のとき、全順序集合といい,\(\\\exists a,b([\lnot (aIb)]\land [\lnot (bIa)])\)のとき(もしくはそうなる可能性があるとき)、半順序集合という。

これも例を挙げてみてみます。

N,Z,Q,Rは全て不等号”≦”と合わせて全順序集合となります。
しかし複素数の集合Cは不等号”≦”に関して全順序集合ではないので半順序集合です。
例えば、1+i≦2-i といった主張は正しいか判断することができないためです。

しかし絶対値をとってからの”≦”として二項関係Iを定義すれば全順序集合となります。

等号なし不等号について

上では全て等号ありの不等号”≦”についての話でした。

ここで等号なし不等号”<“についても考えてみます。まず、定義は次のようにすることができます。

\(A≠\varnothing \)上の二項関係\(I\)が等号なし順序であるとは、次の2条件を満たすときにいう:\(・aIaとなるa\in Aは存在しない(非反射性)\\ ・^{\forall}a,b,c\in A に対して、[(aIb)\land (bIc)]\Rightarrow [aIc](推移性)\)

ここで”<“が上の定義を満たすか確認します。

実数の集合R上の二項関係”<“を考えます。
\(a,b\in \)Rに対して、\(a<b\)を\(b\)が\(a\)よりも大きいこととして定義します。

・\(^{\forall}x\in\)Rに対して、\(x<x\)は偽ですので\(x<x\)となる\(x\in\)Rは存在しません。
・\(^{\forall}x,y,z\in\)Rに対して、\(x<y,y<z\)ならば\(x<z\)ですので推移性もOKです。

これより、等号なし不等号”<“は等号なし順序としても考えることができます。

まとめ

今回は順序の定義について紹介しました。
例を考えるとわかりやすいので、例を挙げながら理解していくと良いかと思います。

同値関係のように順序も不等号を広げたものとして捉えることができ、今まで比べることができないものを厳密な数学で比べるようになるという利点があります。


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