前回順序集合について紹介しました。ここから更に順序の細かい定義に触れていきたいと思います。
今回は全て等号あり順序(X,≦)について書きますが、等号なし順序についても同様に定義できます。
今回も頑張っていきましょう!
極大/極小、最大/最小
最大元/最小元や極大元/極小元が順序集合において常に存在するとは限りません。最大元、最小元、極大元、極小元が全て存在しない例を挙げてみます。
(Z,≦)(整数全体の集合に等号付き順序を入れたもの)は最大元、最小元、極大元、極小元が全て存在しません。直感としては-∞~+∞まで広がっているのでないことが分かりますが、実際に証明をしようとしたらどうすればいいでしょうか?例として、極大元が存在しないことを示します。
\(c\in \)Zが(Z,≦)における極大元だとする。
\(c\in \)Zよりc+1もZの元である。c+1≧cだがc+1≠cであるので、\(c\in\)Zは極大元ではないことがわかる。
上の証明ではx=c+1として定義にそっています。まず偽を仮定した後に命題(ここではcという整数の極大元が存在すること)が真かつ偽であることを導いて(つまり背理法を用いて)仮定が偽であることを示しています。
上界/下界、上限/下限
さらに続けて定義を書いていきます。
定義からもわかりますが、上界や下界は1つとは限りません。また上限や下限も(最大元や最小元が存在するとは限らないので)存在するとは限りませんが、存在するとしたら1つとなります。
また、\(\mathbb{N}\)は下に有界だとわかります。
順序対
順序対は辞書式順序とも言います。例えば、辞書で”あさ”、”むすぶ”、”あい”という3単語を順番に並べたら”あい”、”あさ”、”むすぶ”となります。順序対も同様にまず1文字目の順序(順番)で並べ、もし1文字目で同じなら次の文字で順序を決めるような順序のことをいいます。
正確な定義を下に書きます。
この定義で1文字目が違うときは1文字目で順序を決め、1文字目が同じときは2文字目で順序を決めていることが分かるかと思います。この定義は2つの直積集合でのみできる定義ではなく、一般にn個の直積集合上での二項関係を作ることができます。
まとめ
今回は順序についての定義をいくつか(かなり駆け足でしたが)紹介しました。
二項関係については今回で最後となります。
次回からは今までの定義を使って数の構成をしていきます。大学数学で重要となる実数の概念についても触れたいと思います。よろしくお願いします。
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