集合論(20)数の構成⑤(実数)

前々回までで有理数\(\mathbb{Q}\)の構成をしてきました。前回は実数\(\mathbb{R}\)を構成するための準備としてコーシー列を紹介しました。今回はいよいよ実数\(\mathbb{R}\)の定義をしていきます。

実数\(\mathbb{R}\)

自然数\(\mathbb{N}\)から整数\(\mathbb{Z}\)を構成するときや、整数\(\mathbb{Z}\)から有理数\(\mathbb{Q}\)を構成する際にはいつも同値関係を導入していました。今回も同値関係から導入して、実数\(\mathbb{R}\)上の”=”を定義していきます。

コーシー列の再定義

前回コーシー列を定義しましたが、そこでは一般に実数\(\mathbb{R}\)から\(\epsilon>0\)をとってきました。今回は有理数\(\mathbb{Q}\)から出発する必要があるので、実数\(\mathbb{R}\)から\(\epsilon\)を選ぶことができません。今回だけのためにコーシー列を定義しなおします。

\(\forall q>0(q\in\mathbb{Q})\ \exists N\in\mathbb{N}\ \forall m,l\in\mathbb{N}(m,l\geq N\Rightarrow|a_m-a_l|< q)\)\)

\(\epsilon>0\)を前回は実数からとってきましたが、今回は\(q>0\)として、有理数からとってきてます。
(1):\(\forall\epsilon>0\)に対して、\(\epsilon>q>0\)となるように\(q\)を選ぶことができます。
(2):\(\forall q>0\)に対して、\(q>\epsilon>0\)となるように\(\epsilon\)を選ぶことができます。
(1)と(2)より、実は上の定義は前回与えた定義と同値となり、どちらで定義しても問題がないことが分かります。

実数\(\mathbb{R}\)上の同値関係

まずは次数上の同値関係を書いていきます。この同値関係こそが、実数上の”=”として使われます。

有理数のコーシー列の集合\(C:=\{a:\{a_n\}_{n=0}^{\infty}はコーシー列、\forall n\in\mathbb{N}\rightarrow\ a_n\in\mathbb{Q}\}\)を考える。 \(\forall a,b\in C\mbox{に対して、} a \mbox{と} b \mbox{の同値関係}=\mbox{を以下で定義する。}\) \(a=b\\\overset{def}{\Leftrightarrow}\forall q>0(q\in\mathbb{Q})\exists\ N\in\mathbb{N}, \forall m,l\in\mathbb{N}(m,l>N\rightarrow |a_m – b_l| \mbox{<}q)\)

今までは数列を\(\{a_n\}_{n=0}^{\infty}\)等と書いていたのですが、この定義では省略して\(a\)と書いています。これからは数列として\(a\)と書いたら\(\{a_n\}_{n=0}^{\infty}\)のこととして読んでください。

例を見ていきます。
\(\{a_n\}_{n=0}^{\infty},\{b_n\}_{n=0}^{\infty}\)を以下で定義します:
\(a_n=1+\frac{1}{n},b_n=1-\frac{1}{n}\)
ここで\(a,b\)はコーシー列になっていることが分かります。(証明は省略しますが、必要な場合問い合わせフォームにまでよろしくお願いします。)

\(\forall q>0\)に対して、\(N=[2/q](\mbox{ここで}[\cdots]\mbox{はガウス記号で、}\mathbb{N}\ni n\leq x<n+1\mbox{のとき}[x]=n)\)とすると、\(\exists N\in\mathbb{N}\)となる。ここで\(\forall m,l\in\mathbb{N}(m,l>N)\)とすると、
\(|a_m-b_l|=\frac{1}{m}+\frac{1}{l}<\frac{q}{2}+\frac{q}{2}=q\)
より、\(a=b\)がわかる。

もし考えているコーシー列が収束するなら\(\underset{m,l\rightarrow\infty}{\mbox{lim}}|a_m-b_l|=0\)が\(a=b\)の条件とも言えます。
また、この”=”が同値関係となることは既知として定義で同値関係としています。
同値関係であるかどうかは
・反射性
・対称性
・推移性
を確認する必要があります。証明は省略します。(必要なら問い合わせフォームまで)

実数\(\mathbb{R}\)の定義

さて、同値関係が定義できたので実際に実数を定義していきます。これも有理数\(\mathbb{Q}\)の時と同様、同値関係で割ることを考えます。

\(\mbox{有理数のコーシー列の集合をCとする。実数\(\mathbb{R}\)を次の商集合で定義する}:\\ \mathbb{R}\overset{d}{\equiv}C/=\\ \mbox{ここで同値関係}=\mbox{はコーシー列上の同値関係である。}\)

コーシー列で実数一つ一つと対応させながら同じものは1つとして考えています。この定義は有理数\(\mathbb{Q}\)から無理数を含む実数\(\mathbb{R}\)へ拡張させるものです。例を出してみます。

無理数の\(\pi\)について。
有理数上の数列\(\{a_n\}_{n=0}^{\infty}\)を次で定義する:
\(a_n\)は\(\pi\)の小数点以下第\(n\)位までの数

こうすると\(\forall n\in\mathbb{N}\Rightarrow a_n\in\mathbb{Q}\)なので有理数上の数列となっています。また、前回示したようにこれはコーシー列となっていて、有理数から実数が作れたことが分かるかと思います。

まとめ

今回、実数\(\mathbb{R}\)の定義を、有理数\(\mathbb{Q}\)から作りました。
とりあえず今回までで数の構成は終わりです。
次回からはより集合論らしい話題に入っていこうと思います。よろしくお願いします!



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