こんにちは!マシューの数理理論部屋です。
今回からは写像の特性についていくつかの命題を証明していきたいと思います。
特に今回は合成写像と単射、全射の組み合わせの有名な命題を証明します。
よろしくお願いします。
\(g\circ f\)が全射\(\Rightarrow g\)が全射
説明
まず、\(g:B\rightarrow C\)が全射であるとは、
\([^{\forall}c\in C] \Rightarrow [\exists b\in B(g(b)=c)]\)
でしたので、今証明しようとしている命題は第4回で紹介したように、\([A\Rightarrow B]\Rightarrow [C\Rightarrow D]\)の形となります。
この命題の証明方法は、まず\(C\)を仮定したうえで(\(A\Rightarrow B\)を使って)\(D\)を示すというものですので、これに則ります。
証明
\(\color{red}{^{\forall}c\in C} \)を仮定する。
この時、\(g\circ f\)が全射なので、\(\exists a\in A((g\circ f)(a)=c)\)である。
\(f:A\rightarrow B\)は写像なので、\(f(a)=b\)とすれば\(\color{red}{\exists b \in B(g(b)=c)}\)となる。
赤文字で示した部分をみると\(g\)が全射だとわかる。
例
次のように写像\(f,g\)を定義します。
\(f:\)R\(\rightarrow\)R,\(r\mapsto r^2\)
\(g:\)R\(\rightarrow\){\(x\in\) R:\(x≧0\)},\(r\mapsto r^2\)
この時、合成写像は
\(g\circ f\) :R\(\rightarrow \){\(x\in\) R:\(x≧0\)},\(r\mapsto r^4\)
となり、全射となっています。
実際に\(g\)も全射となっていることが分かるかと思います。
\(f\)が全射でない例
\(f\)が全射かどうかを証明していないのには理由があります。それは、与えられた仮定だけではわからないからです。
例えば、\(f(x)=g(x)=x\)とすれば自明な全単射となり、合成写像も全単射ですので特に\(f\)は全射です。
しかし、上の例では\(f\)は全射ではないことが分かるかと思います。
もしも命題が証明されてない時、証明するか反例を探そうとする姿勢はとても大事です。それが数学の発展に繋がるかもしれないからです。
\(g\circ f\)が単射\(\Rightarrow f\)が単射
これも同様に\([A\Rightarrow B]\Rightarrow [C\Rightarrow D]\)の形として証明することができます。
証明
\(\color{red}{f(a)=f(a’)}\)を仮定する。
この時、\(g:B\rightarrow C\)は写像なので1つの入力に対して出力は1つのみ得られる。
故に\((g\circ f)(a)=(g\circ f)(a’)\)となる。
\(g\circ f\)は単射なので\(\color{red}{a=a’}\)を得る。
赤文字で示した部分を見ると\(f\)が単射だとわかる。
例
次のように写像\(f,g\)を定義します。
\(f:\)N\(\rightarrow\)Z,\(n\mapsto n^2\)
\(g:\)Z\(\rightarrow\)N,\(n\mapsto n^2\)
この時、合成写像は
\(g\circ f :\)N\(\rightarrow\)N,\(n\mapsto n^4\)
となり、単射となっています。
実際、\(f\)も単射となっていることが分かるかと思います。
\(g\)が単射とならない例
これも同様に考えることができます。\(f(x)=g(x)=x\)ならば特に\(g\)は単射です。
しかし上の例では\(g\)ではありません。
これも同じで与えられた仮定だけでは判断できない、というのが正解となります。
まとめ
今回は合成写像が単射/全射なときに分かることを証明しました。
実はこの証明を使って代数学では「完全系」と呼ばれる集合列を作ります。
それ以外にも様々な分野で使われる命題ですので、覚えておいて損はないかと思います。
また、数学の証明に慣れるには時間がかかります。
私が考える最も速い方法は、まず証明を丸暗記してしまうことです。これはあまり数学らしくないと考える人もいるかもしれませんが、まず覚えてみることで証明の形を理解できたのが私の経験としてありますし、そのおかげでより厳密な抽象数学が好きになりました。
このブログに書いてある内容だけで理解する必要はなく、理解している人に聞いたり、たくさんある教科書や文献を読むことでより理解が深まったりもしますので他にも調べてみることをお勧めします。
集合論はわざと難しく作ってあるのではなく、厳密な議論をするためのものであることが慣れるほどに分かってくると思います。
少し話がずれましたが、次回は逆像についての命題を証明していきたいと思います。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。質問や挙げてほしいトピック、訂正点などありましたらコメント欄まで書いていただけると幸いです。
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