集合論(13) 同値類・商集合・分割

前回同値関係について紹介しました。
その同値関係を更に深めてみると、何が見えてくるのかを紹介したいと思います。

同値類(同値類)

定義

\(E\)を\(A\)上の同値関係とする。このとき、ある\(a\in A\)に対して、{\(x\in A:aEx\)}\(\subset A\)を\(E\)に関する、\(x\)の属する同値類よび、\([x]_E,x/E,[x] \)等と書く。また、この\(x\)のことを同値類の代表元という。

さて、この定義の意味を考えてみます。前回出した例を挙げます。
同値関係を\(E:=\){\((n,m)\in \)N\(^2:\exists l \in \)Z(\(n-m=2l\))}として、同値類を求めていきます。

※以下では0も自然数にいれていますが、もし入れないと考えても、純粋に0を抜いて議論すれば問題ありません。

\(0\in\)Nがどのような同値類に含まれているかを検討します。

  • \(0-0=0= 2・ 0,0\in\)Zゆえ\(0E0\)より\(0\in [0]\)。
  • \(1-0=1=2・0.5,0.5\notin\)Zゆえ\(0\notin [1]\)
  • \(2-0=0= 2・ 1,1\in\)Zゆえ\(2E0\)より\(0\in [2]\)。
  • \(3-0=3=2・1.5,1.5\notin\)Zゆえ\(0\notin [3]\)

これを続けると任意偶数\(g\)に対して0\(\in [g]\)と任意の奇数\(k\)に対して0\(\notin [k]\)が分かるかと思います。
更に0以外の自然数でも検討していくと任意の偶数g’と奇数k’に対して\(g’\in [g],k’\notin [g],g’\notin [k],k’\in [k]\)であることが分かります。

商集合

定義

同値類の全体{\([x]_E:x\in A\)}\subset P(A)を商集合とよび、\(A/E\)または\(A/ \sim \)と書く。

商集合は集合族です。上の例で商集合を求めると{[0],[1]}になります。[0]が偶数全体の集合、[1]が奇数全体の集合です。

分割

定義

集合\(A\)に対して、\(S\subset P(A)\)が\(A\)の分割であるとは、次の3条件が成立することである:\(\\・A\in S\Rightarrow A≠\varnothing \\・A,B\in S \Rightarrow A\cap B=\varnothing \\・\cup S=A\)

この

上の例では商集合{[0],[1]}が自然数Nの分割となっています。

確認は
・[0],[1]\(\neq \varnothing \)
・\([0]\cap [1]=\varnothing\)
・\(\cup \){[0],[1]}=[0]\(\cup\)[1]=N
よりOKです。

※well-definedについて

今回の本題は終わりですが、well-definedについて少し解説して終わりたいと思います。
集合論で必要な内容というよりは数学全体にて定義をする際に必要な考え方ですので、ぜひ読んでいただけたら嬉しいです。

[奇数]+[奇数]=[偶数]は小学生でも知っている事実です。
この考え方を同値類で考えてみると[1]⊕[1]=[0]となりますが、この⊕の意味は、代表元\(n,m\)に対して[n]⊕[m]=[n+m]で定義します。([1]⊕[1]=[2]=[0]のような例を考えればわかりやすいと思います)

さて、この[n]⊕[m]=[n+m]の等号”=”ですが、本当に”=”として成立するのでしょうか?

これは「この”=”が整合的な定義(well-defined)となるか」という意味です。
例えば、n~n’,m~m’となるn’,m’を選ぶと[n]=[n’],[m]=[m’]ですので[n’]⊕[m’]=[n’+m’]を計算した時、果たして本当に[n+m]=[n’+m’]となりえるでしょうか?

このように定義をする際にwell-definedであること、つまり矛盾がないことを示す必要があります。

まとめ

同値類・商集合・分割について紹介しました。
“=”の意味を少し拡張した意味の同値関係から始まり、同値関係同士をグループ化するのが同値類、そして同値類を束にしたものが商集合、そして同値類の作り方が被ることも余ることもない商集合を分割と呼びました。

例えば、集合を群としてみなした時、商集合は商群という意味を付与することができます。そこから代数学の重要定理である準同型定理等に発展させることができます。このように商集合は応用がかなりききます。

今回もありがとうございました。


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