SFの世界を計算してみる(1)

こんにちは!マシューの数理理論部屋です。
今回は大学生で習う力学の範囲応用例として計算をしたいと思います。3回程に分けて解説する力作となっております。数式が分からなくとも、文字だけを追っていてもわかるように解説していきたいと思います。
どうぞよろしくお願いします。

動機・目的

慣性モーメントが何か、ということは置いといてまず何故急にこんな主題にしたかを説明したいと思います。

私の最近のブームとして、「機動戦士ガンダム\(\overset{ユニコーン}{UC}\)」という作品があります。”ガンダム”という単語は聞いたことある方が多いのではないでしょうか。
この作品を読んでいると、筆者の福井先生はちゃんと物理学の知識があって、更にそのうえでSFの世界観を築いているなと感じることがあります。その中の描写に次のようなものがあります。

コロニー落とし作戦

知っている方は、あれか!と思うのではないでしょうか。私もかなり衝撃を受けた作戦です。何故この作戦を行ったか、どんな経緯があったのか、等は今回の主題からずれますので省略して物理的に何があったかを紹介します。

「機動戦士ガンダム\(\overset{ユニコーン}{UC}\)」の時代設定としては、人類は月まで居住範囲を広げていて、月の衛星軌道上にコロニーという居住地が存在します。これを地球まで落とすという作戦がコロニー落とし作戦です。

コロニーが地球に落ちたことによってさまざまな災害がありましたが、その中の記述で次のような記載がありました。

「落下した瞬間、コロニーは地球そのものの動きに影響を与え、自転速度を一時間あたり一・二秒加速させていたのだ」・・・(1)

計算目標

この(1)の文を読んだ瞬間、計算してみようと思いました。

月の高さにあるコロニーが地球まで落ちてきたとき、自転にこれだけの影響を与えるには、コロニー全体の重量はどれだけなのだろうか?

について計算していきます。

計算順序

さて、いきなりこんなこと言っても実際に計算できるのか、できたとしてどうすればいいのか迷ってしまいそうです。
まずは、どんな順序で計算していくのかという道筋を立てていきます。
慣性モーメント等の比較的高度な用語が出てきますので流し読みでも大丈夫です。

1,地球の慣性モーメントを計算する

慣性モーメントは、簡単に言えばある物体を自転させるのにどれだけの力(正確には運動量)が必要かを表す物理量です。つまり「回し易さ」というわけです。
地球の自転が1時間あたり1.2秒早くなったということなので、地球の自転を調べる必要があります。その為に地球の回し易さを計算します。

2,地球とコロニーの衝突前後の角運動量を計算する

角運動量は、実際にどれだけの強さで回っているか(この場合地球を公転している強さ)を表す物理量です。
角運動量は速度だけではなく、物体の重さも入れないと計算できないのですが、コロニーの重さはとりあえず変数mとして計算してしまいます。
地球の角運動量については慣性モーメントと角速度からわかるようになっています。

3,運動量保存則を使って方程式を立てて計算する

高校力学で運動量保存則について習ったかと思います。実は角運動量についても運動量保存則が成り立ちます。これは衝突しても、爆発しても成立する保存則なので今回の状況でも保存していることを使うことができます。
式にすると

衝突前の地球とコロニーの角運動量=衝突後の地球とコロニーの角運動量・・・(2)

という方程式を立てていることになります。
(2)式はm以外の全ての物理量が既知ですのでmに対する方程式となり、方程式を解くことでコロニーの重さmが求まります。

使う物理量

既に分かっている物理量を使うのですが、今回の計算手順1と2で次々に代入していくので先にまとめておきます。

物理量数値単位
地球の質量\(5.972\times 10^{24}\)\(kg\)
地球の半径\(6400\)\(km\)
地球の自転周期\(23:56\)\(h:m\)(時間:分)
地殻の密度\(2.9\)\(g/cm^3\)
地殻の厚さ\(14.7\)\(km\)
マントルの密度\(4×10^6\)\(kg/m^3\)
マントルの厚さ\(2900\)\(km\)
外核の密度\(1.26×10^7\)\(kg/m^3\)
外核の厚さ\(2200\)\(km\)
内核の密度\(1.38×10^7\)\(kg/m^3\)
内核の厚さ\(1300\)\(km\)
月の公転周期\(27:7:43\)\(d:h:m\)(日:時間:分)
月と地球の距離\(384400\)\(km\)

引用先:
月 – Wikipedia,地球内部物理学 – Wikipedia,地球 – Wikipedia

※地球の半径と内部の密度,厚さは参考文献や計算方法によって違いがあるため概算(地殻に関しては海70%,陸30%として比重計算)
※月の公転周期と地球の自転周期は恒星周期を採用

数値の正確性はここでは議論しないことにします。もし別の値を使いたかったらその値を計算式に代入すればいいだけです。
この表は次回以降でも再掲しようと思います。今はとりあえず見てみるというだけでOKです。

まとめ

今回は「機動戦士ガンダム\(\overset{ユニコーン}{UC}\)」のコロニー落とし作戦で起きた状況からコロニーの重さを計算するための準備をしました。
次回以降もぜひ読んでいただけたら嬉しいです。

もし質問や間違い、挙げてほしいトピック等ありましたらコメント欄まで書いてもらえると幸いです。
最後までお付き合いいただきありがとうございました!!


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