こんにちは!マシューの数理理論部屋です。
今回は前回に引き続き、SFの世界を計算するシリーズの2回目を書いていきます。
計算順序
まずは前回の内容をもう一度見ていきます。
ガンダム\(\overset{ユニコーン}{UC}\)という作品に出てくる描写で、宇宙空間にあるコロニー(居住地)を地球に落とした際、自転周期が変わることがありました。実際に計算したらどれ程の威力なのかを調べるためにまずコロニーの重さを計算していきます。
コロニーの重さを計算する順序は以下の通りです。
1,地球の慣性モーメントを計算する
2,地球とコロニーの衝突前後の角運動量を計算する
3,運動量保存則を使って方程式を立てて方程式を解く
今回は”1,地球の慣性モーメントを計算する”の準備をしていきます。
慣性モーメントとは
前回も説明しましたが、慣性モーメントは回転させやすさを表した量です。大学の物理学(剛体の力学)で習う物理量で、(1)式によって慣性モーメント\(I\)を求めることができます。
\(I=\displaystyle \int \rho (\overset{\rightarrow}{x})r^2 (\overset{\rightarrow}{x})dV\)・・・(1)
ここで\(\overset{\rightarrow}{x}\)は物体内の座標、\(\rho(\overset{\rightarrow}{x})\)はその座標での物体の密度、\(r(\overset{\rightarrow}{x})\)はその座標と回転軸の距離、\(\displaystyle \int dV\)は物体内の体積積分です。
地球の内部構造
地球の慣性モーメントを(1)に当てはめて計算するには地球を体積積分しないといけません。これは地球の内部構造とその密度が分かっていないとできないので、内部構造について少し触れます。詳細は私の専門分野ではないので、高校で習う程度の範囲とします。
使う部分だけをまとめて表にします。
名前 | 厚さ | 密度 | 状態 |
地殻 | \(14.7km\) | \(2.9×10^6kg/m^3\) | 固体 |
マントル | \(2900km\) | \(4×10^6kg/m^3\) | 固体 |
外核 | \(2200km\) | \(1.26×10^7kg/m^3\) | 液体 |
内核 | \(1300km\) | \(1.38×10^7kg/m^3\) | 固体 |
地球の内部構造は中心から内核、外核、マントル、地殻という順番で層になっています。
地球全体の密度は約\(5300kg/m^3\)と言われていますが、深さごとに密度が違うので(1)の\(\rho\)にそのまま平均密度を代入してはいけないことが分かるかと思います。
とりあえず各層内の密度は一定として考えてみます。
物理モデル
物理モデルとして以下の設定を仮定します。本当はこのようになっているわけではありませんが、計算できるように近似しています。
- 地球は完全な球体
- 地殻、マントル、外核、内核は全て同じ角速度で自転する
- 地殻、マントル、外核は完全な球殻(球の中身を抜いたもの)
- 内核は完全な球体
※本当は内核の方が地球の(正確には地殻の)自転より速く、外核が液体なのでそれが成立しています。
まとめ
今回は計算手順1の”地球の慣性モーメントを計算”の準備として物理モデルを仮定しました。次回は実際に地球の慣性モーメントを計算してみて、考察していきたいと思います。
今回も最後までお付き合いいただきありがとうございました。次回もよろしくお願いします。
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