こんにちは!マシューの数理理論部屋です。
いよいよこの「SFの世界を計算してみる」シリーズも最終回となりました。
今回は計算を終わらせて、考察および総まとめをしていきたいと思います。
計算
今回の計算は計算手順3の「運動量保存則の式を立てて計算する」をしていきます。
角運動量保存則
運動量保存則は高校物理学で習ったかと思います。運動量保存に関しては力学的エネルギー保存則よりも強い保存則です。例えば爆発したり、反発係数が1でないような衝突、さらに摩擦があっても全体の運動量は保存されます。
この運動量保存則は角運動量に関しても同様の保存則が成り立ちます。
今回はコロニーと地球の衝突を考えているのですが、この衝突が起こっても角運動量は保存されるというわけです。
つまり、以下の式が成立します。
\(\overset{\rightarrow}{L}_{地球・前}+\overset{\rightarrow}{L}_{コロニー・前}=\overset{\rightarrow}{L}_{地球・後}+\overset{\rightarrow}{L}_{コロニー・後}\)・・・(1-1)
地球の自転軸とコロニーの公転軸が一致して、回転方向も同じだと仮定をしているので(1)にて両辺のベクトルの大きさをとると(1-1)式は(1-2)式のようになります。
\(|\overset{\rightarrow}{L}_{地球・前}|+|\overset{\rightarrow}{L}_{コロニー・前}|=|\overset{\rightarrow}{L}_{地球・後}|+|\overset{\rightarrow}{L}_{コロニー・後}|\)・・・(1-2)
物理量を代入して計算
この(1-2)に出てくる4つの項は全て前回求めましたので、値を代入して計算すると
\(5.04\times 10^{32}+3.4\times 10^{10} m=5.24\times 10^{32}+4.03\times 10^4 m\)・・・(2)
ここで両辺は角運動量の大きさの単位\([kg・km^2/d]\)となっており、\(m\)はコロニーの重さ\([kg]\)です。
(2)は1次方程式ですから簡単に解くことができて、\(m=5.88\times 10^{20} [kg]\)と求まります。
考察
さて、目的のコロニーの重さを求めることができました!お疲れさまでした!
と言いたいところなのですが、この重さがどれほどのものなのか、そしてこれを地球に衝突させたときのエネルギーはどれほどになるのかを考察して終わりにしたいと思います。
換算
鉄筋コンクリート造りの10階建てビルは面積などにもよりますが、大体6000トン程度の重さがあるといわれています。コロニーの重さは10階建てビル約100兆個分ということですね。
こんな重さのものを打ち上げるなんてすごい科学力だなと思います。国際宇宙ステーションISS(420トン)に換算すると、約1400兆個分に跳ね上がります。
この重さのものを地球軌道ではなく、月の公転軌道まで持っていくのですから本当にすごいです。
それもそのはず、後々考えてみれば地球の質量の0.01%もの質量がありました笑。
衝突のエネルギー
ではこの「コロニー落とし作戦」のエネルギーがどれほどのものなのかを計算していきます。空気摩擦や熱圏での消費は計算せずに純粋なエネルギーを求めます。
またコロニー自体は月の重力下にあるものですが、月の重力を振り切るだけのエネルギーを与えないと地球には落ちてこないので、地球の重力のみによるポテンシャルエネルギーとコロニーの運動エネルギーを計算していきます。
月の周期で、地球の重力ポテンシャルは(3)式で、運動エネルギーは(4)式で与えられます。
ここで\(T\)は周期、\(h\)はコロニーの高さ、\(m\)はコロニーの質量、\(M\)は地球の質量、\(G\)は重力定数です。
\(U=-\displaystyle \frac{GMm}{h}\)・・・(3)
\(V=\displaystyle \frac{1}{2} m\displaystyle (\frac{2\pi h}{T})^2\)・・・(4)
(3)では月の高さの時と地球の半径の時の差、(4)では月の高さ、月の公転周期での時と地球の半径、地球の自転周期での時の差をもとめます。さらにそれらの和がコロニーが失った力学的エネルギーとなります。
値を代入すると
(衝突のエネルギー)=(コロニーが失った力学的エネルギー)
=\(3.63\times 10^25 [J]\)
となります。
このエネルギーは手元の計算機で広島原爆の6000億倍ものエネルギーとなります。
これは・・・やばいですね。
白亜紀に起こった大量絶滅の原因と言われている隕石の衝突に匹敵するレベルな気がします。
まとめ
今回までで「SFの世界を計算してみる」シリーズは終わりとなります。
計算結果を見てみると、ただ物を落とすだけなのに人類が滅亡する危機に落ちるほどのエネルギーでした。
今回計算してみて、物語の創造がよりしやすくなったと感じますし、割と面白かった印象です。第2弾をやるかもしれないのでその時はよろしくお願いします。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。質問や訂正、挙げてほしいトピック等ありましたらコメント欄まで書いていただけると幸いです。
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